プレカリアートとは何か

かつては当たり前だった「サラリーマン」ですが、現代では一種の特権階級となっています。そのかわりに増え続けてきたのが、プレカリアートです。

f:id:mikuriyan:20180305215014j:plain特権階級の人々

「ワーキングプア」「派遣社員」「非正規雇用」といった下層が日本で増えていることは、よく知られていることです。

20世紀の所得分配システムが壊れている。国際競争力を高めるための規制緩和、

一般的に彼らは以下のような特徴を持ちます。

  • 給与依存:貯蓄ができないほど低賃金
  • 有給休暇や退職金がない
  • 仕事を続けられる保障がなく、突然の解雇の恐れがある

すなわち、ホームレスと労働者の間となる人々が急増しているということです。そういった人々を指して、「プレカリアート」という造語ができています。

労働者を意味するプロレタリアートと、プレカリprecarious(「不安定な」の意)を合わせた造語です。日本語でいうと「ワーキング・プア」が近い概念かと思いますが、労働者だけでなく失業者も含みます。

 

Guy Standing “プレカリアートとは何か”

Guy Standingというロンドン大学の経済学者がTEDでプレカリアートについて講演していました。が、日本語訳が見つからなかったので雑に訳してみました。たぶん変な訳ばかりですが、おかしいところあったら指摘してください。

(原文:Guy Standing: What is the Precariat at TEDxPrague (Transcript) – The Singju Post

私たちは世界的な変化の只中にいます。このことは、グローバルな市場経済の苦痛に満ちた建設を見ていることを意味します。過去30年以上にわたって、ネオリベラリズムはこの制度を形作ってきました。

市場は開放されましたが、知的財産権によって極少数の人々がもっとも大きな収入を得ています。そして世界の労働供給が四倍になっています。

つまり、世界の労働市場に20億人が加わったことを意味します。このことが、ヨーロッパ、アメリカ、日本の賃金を大きく引き下げる圧力をかけています。そして将来賃金があがる見込みはないといっていいでしょう。

 

不平等が拡大し、不安定な状態がましていくにつれて、新しい階級構造が世界で形成されています。私たちはそれについて、知的に、政治的に、市民として直面しなければならない。

トップには、プルトクラシー(Plutocracy:金融寡頭政治)、オリガルヒ(Oligarch:寡頭制の支配者)とエリート(elite)が、その巨大な力によって世界中の収入のさらに多くの部分を享受しています。

その下にはサラリアート(Salariat:サラリーマン階級)がいます。雇用され、年金、有給休暇といったもので不安なく暮らせています。数としては減少傾向にあり、彼らは息子や娘の心配をしています。そして古きプロレタリアートですが、この20世紀の労働者階級は縮小傾向にあります。

その下にはプレカリアートがあります。そしてその下は道端で早死するようなルンペン(浮浪者)です。

 

現在、プレカリアートは大きなの人口を有しており、三つの次元で定義されます。

第一に、彼らは自らを生活を不安定な労働と不安定な生活に慣れさせなければならないということです。

一種の実存的な不安ですね。彼らは職業的な物語(ナラティブ)を持っていない。物語とは、「私は何者になった」とか、「私は何者である」といったことです。彼らはそれを持たない。加えて、彼らは地獄のような量の業務をこなさなければならない。

報酬の与えられない仕事は認識されずに無視されますが、彼らがそれをしないと、その結末に悩まされることになります。これは教育のレベルが期待された労働のレベルを上回る歴史上最初の階級です。

このことが私の呼ぶところのプレカリアート精神を生みだしています。即ち、自分の時間をどう使うかを知らないのです! あれやこれをやるべきか、それとも職業訓練や人脈構築をすべきか? と、常に不安にかられるのです。

 

プレカリアートの第二の面はこうです。プレカリアートは金銭的な賃金に依存しています。彼らは年金、有給、医療休暇といった非金銭的な利益を得ることができません。リスクを自らに負っているのです。

そのため、彼らは経済的に不確実な生活に直面しているだけでなく、生活の維持を不可能にする借金を背負うリスクも高い。ひとつのミスが、ひとつの事故が、ひとつの悪い決定が、彼らを路頭に迷わせることになります。これがプレカリアートの現実です。

 

第三の面は、プレカリアートは市民権、文化権、社会権、政治権といった大権をシステム的に失う最初の新興階級ということです。彼らは、自らの利益や願望を体現するような政党、政治家を見つけられない。

そして彼らは経済的な権利を失いつつあります。彼らは訓練も、資格のあることもできないからです。これがプレカリアートの現実です。

しかしこれは偶然ではない。つまり、グローバル資本主義に望まれたことであり、なくなるはありません。

現時点のこの悲劇において、プレカリアートは三つの領域に分かれています。

第一の領域を私はアタヴィストatavists(隔世遺伝)と呼んでいます。過去を見つめる様な人です。彼らの両親やコミュニティの人々は職業を持ち、誇りを持ち、地位を持っていました。鉱夫や湾岸労働者、鉄鋼業者、自動車整備士。しかし彼らにはそれがない。そして彼らは失われた過去から剥奪されたような感覚を持っています。

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これらのプレカリアートは、大学教育を受けておらず、ネオ・ファシスト的なポピュリストに傾倒しやすい。

そして今日、多くのエリートと著名な人々はそのことを心配しています。私は彼らの不安を増してやる必要があると思う。悪夢を見させましょう。私はいくつかの彼らの悪夢を私の新しい著書に描いてます、いくつかのコピーがありますので興味があればどうぞ。

第二の領域は移民、放浪者、マイノリティ、難民で構成されます。私はノスタルジックに表現していますが、それというのも、彼らには「ホーム」という感覚がないからです。ここにはホームがなく、そこにも、どこにもない。彼らは生き残るためにつねに頭を下げます。

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しかし昨年ストックホルムの外で私が見たように、圧力が大きくなりすぎると、彼らは憤怒を爆発させます。私たちは彼らを非難することはできないでしょう。

 

第三の領域は私が「プログレッシヴ」と呼ぶ人々です。彼らは大学へ行ってますし、彼らの両親はお前には未来があるよ、といいます。しかし結果としては未来はないのです。すでに借金を背負っていて、その借金を未来に伸ばす以外には。このプレカリアートは、失語症に悩み、絶望感、疎外感、不安感に悩んでいます。

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しかし彼らはまた、私が伝えたいことにも悩まされています。怒りです! この怒りは正当なものですが、しかし幸運にもこれらのプレカリアートはネオ・ファシストや愛国主義にはなりません。

彼らはBrexitやドナルド・トランプ、マリーヌ・ルペン(フランスの極右政党「国民戦線」の代表)には投票しません。しかし彼らは政治的な楽園や新しい先進的な政治を求めています。そして政治的討論をすることは、私たちの義務です。

――翻訳ここまで

以下、BI(ベーシック・インカム)を導入すべき、という話になります。私も大賛成ですがここでは省略します。興味ある方は呼んでみて下さい。

 

日本でもプレカリアートは大増加中

Guy氏の講演は、まさに日本の現況に当てはまるような気がします。

日本は比較的移民は少ないですが、現代の奴隷制である「外国人研修制度」は世界的に有名ですし、「奨学金地獄」はよく聞く話です。また、ブラック企業や派遣労働者といったワーキングプアの増加と、それに伴うネトウヨの増加は、まさにアタヴィストの典型と言えそうです。

私たちはナショナリズムを「思想的なもの」と考えがちですが、案外経済とは切ってもきれない関係なのかもしれません。

プレカリアートは今後も増え続ける

Guy氏は大卒ニートのようなプログレッシブに期待をよせているようです。しかし、日本ではどうでしょうか。左派思想が骨抜きにされており、また学生や大卒の政治に対する問題意識は高くないでしょう。プログレッシブは改革も抑止もできず、日本のプレカリアートは増え続け、右も左も非正規だらけになりそうです。

非正規社員がストロングゼロと愛国心番組で心をなぐさめ、明日にはカミカゼ的に過労死するような美しい国となるのではないでしょうか。

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